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ももち東洋クリニック

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コラム

繰り返す高齢者の皮膚剥離に十全大補湯 気血両虚を補い、治癒を早め皮膚の脆弱性も改善

高齢者では様々な皮膚のトラブルが見られますが、臓器の働きの低下を基盤に、気血両虚を呈していることもしばしばです。特に漢方では皮膚と大腸は関連が深いと考えられており、気血を補って臓器の働きを高めることで皮膚症状も改善した一症例を紹介いたします。

症例は83歳女性で、主訴は多発する皮膚剥離と下肢の拘縮です。既往歴としてX-20年頃、甲状腺機能亢進症でアイソトープ療法を受け、母親が糖尿病です。

【現病歴】

前は家族に支えられて歩行していましたが、X年4月に発熱があり近医総合病院へ入院して気道系の感染症を疑われ、点滴などを受けて軽快しました。しかし、入院期間中の安静により両下肢の拘縮が著明となり、リハビリ目的で同年6月に転院となっています。

【現症】

血圧136/70mmHg、脈拍78/分、体温36.9℃。やや、るいそう気味で、呼びかけても発語はわずかにうなずく程度で、コミュニケーションはほとんど不能でした。両下肢は伸展尖足位で拘縮しており、また上肢も動きは硬くなっていました。

【漢方医学的所見】

自覚症状については不明で、体臭、口臭が強く、また体動が激しくベッドから転落しそうになることがしばしばありました。脈候は硬い脈で、舌候は湿潤した微白苔、腹候は腹力弱で、両腹直筋緊張、小腹不仁がうかがわれました。

【入院後経過】

車椅子移乗の際などに、あるいはほとんど明らかな誘因無く、前腕、下腿、肘頭部などに、大小さまざまな皮膚剥離をきたしやすく、その都度、創処置を行いました。8月末に呼吸困難が出現し、うっ血性心不全と診断して利尿剤や血管拡張剤などで加療を行い、急性の心不全状態は脱しましたが、誤嚥しやすい状態で経口摂取が不能となり、残念ながら一時経鼻経管栄養状態となりました。

X+1年5月より経口摂取を再開、主方をツムラ清肺湯(セイハイトウ)(TJ-90)6.0gとして、一方、上肢などに散見される皮膚剥離に対してツムラ十全大補湯(ジュウゼンタイホトウ)(TJ-48)2.5g/日を併用しました。経過中、誤嚥や心不全傾向などは抗生剤や利尿剤を用いてコントロールして半年ほど経過すると、四肢の皮膚が丈夫になり、多少の擦過では剥離をきたさないようになりました。

「表皮剥離」という病名は私が調べた範囲では通常の皮膚科の教科書にはありませんでした。皮膚の物理的な障害と言えますが、一般的な褥瘡とも病態は異なるようです。また「表皮」とは言っても、ほとんどは出血を伴い、実際は真皮レベルの障害のようです。多くは高齢者で観察され、これには皮膚結合組織の脆弱性がもっとも重要と思われますが、他に水分保持能力の低下なども関与しているかも知れません。西洋医学では局所の保護以外に予防法はなく、発生した場合に創の処置、保護を行うだけと思われます。

皮膚は裏返せば腸管とひと続きで、皮膚の脆弱性は即ち内臓の脆弱性を反映していると考えても良いかもしれません。ここで不足しているのは「気」や「血」であり、特に生体の物質的側面を支える血の不足は血虚と呼ばれ、脱毛や皮膚枯燥など皮膚の栄養状態と大いに関係が深いと考えられています。血虚を改善する代表的な方剤は四物湯(シモツトウ)で、地黄(ジオウ)、芍薬(シャクヤク)、当帰(トウキ)、川きゅう(くさかんむりに弓)(センキュウ)の4味からなりますが、それ単独で用いられることは少なく、他の生薬と共に別の方剤の一部を形成していることがしばしばあります。十全大補湯などはその代表で、生薬が一味足りない人参養栄湯(ニンジンヨウエイトウ)や当帰芍薬散 (トウキシャクヤクサン)などもポピュラーな処方でしょう。

血の不足は同時に気の不足(=気虚)を伴うことがしばしばで、同時に補気を行うことも重要ですが、十全大補湯は気血両虚を補う方剤であり、その点で便利な方剤です。漢方治療の特徴は今現在できている剥離創の治癒を早めてくれることと、本症例のように剥離の起こりやすい皮膚の脆弱性を改善してくれるということがあります。とはいえ、いずれの場合においても、自力での食事の経口摂取ができるかどうかが、創傷治癒機転を高めるポイントになると考えておりますので、積極的に経口摂取に挑戦する環境を整えつつ、十全大補湯などを併用するのが良いのではないでしょうか。 (田原)

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